ファイナンシャルプランナーのリツです。
今回は、病気やケガで働けなくなったとき、働いていても年間所得が少なくて困っているときなど、困ったときの国民年金保険料の免除と納付猶予について解説します。
少ない収入の中から、少しでも支出を減らしたいものです。
国民年金保険料もその一つだと思います。
払えなくて困ったとき免除と納付猶予がある
収入が見込めない理由は人それぞれあると思いますが、 経済的に困難な状況に置かれている場合でも、将来のことを考えると国民年金保険料を払わないでいるというのは、何だか不安になると思います。
この国民年金保険料を払わないことで、老後の年金がもらえなくなるかも…
そんな時は、迷わずに市区町村窓口で相談してください。
それを解決してくれる制度がきちんとあります。
企業や官公庁に勤めている人は、すでに厚生年金保険料として年金保険料が支払われた後の手取り給与金額で生活していますが、自営業者やフリーランス等の人たちは、自分の所得の中から国民年金保険料を払わなければなりません。
その所得が少ないときに、国民年金を第1号被保険者として納めている人は、経済的に苦しいときなどに、国民年金保険料を免除してくれたり、納付を猶予してくれる助かる制度があるのです。
お金がないからといって、放っておいて、払わないのが一番よくありません。
所得が少なく、払えないと思ったら、まずは市区町村窓口に行きましょう。
免除・納付猶予とも老齢・障害・遺族基礎年金の受給資格期間に算入されます。
しかし、納付猶予は年金額の計算に反映されないので、まずは免除から検討してみてください。
免除は全額・4分の3・半額・4分の1の4種類
免除は4種類あります。
免除を受けても、その免除期間は年金保険料を払った期間として扱われます。
「年金の受給資格期間に算入される」という扱いです。
第1号被保険者本人が申請して、承認されれば免除となります。
ただし、実際には全額払っていなかったり、少ない金額を納めていたりします。
ですから、将来もらえる年金の金額を計算するときは、きちんと払っているときより減額された金額(免除の種類で異なる)で計算されます。
これを増やすには追納という方法があります。
追納については⇒「国民年金をわかりやすく説明 第6回(免除期間が終わったら早めに追納しよう)」で確認してください。納付猶予の方もこちらをご覧ください。
学生の人は、この免除制度は使えません。
代わりに、学生納付特例制度があります。
学生納付特例制度については⇒「国民年金をわかりやすく説明 第6回(現在の学生納付特例とは?)」で確認してください。
免除の基準
国民年金第1号被保険者本人、もしくは配偶者・世帯主の前年の所得額(1月~6月に申請した時は前々年度の所得額)が定められた額以下のとき
定められた額
全 額 (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
4分の3 78万円+(扶養親族等の数×38万円)+社会保険料控除額等
半 額 118万円+(扶養親族等の数×38万円)+社会保険料控除額等
4分の1 158万円+(扶養親族等の数×38万円)+社会保険料控除額等
※扶養親族等の数×38万円は「扶養親族等控除額」と確定申告書、または源泉徴収票に記載があります。
※社会保険料控除額等は確定申告書、または源泉徴収票に記載があります。
※扶養親族等に障害をお持ちの方等がいる場合は、金額が変わります。
所得以外の基準 いずれかに該当するとき
1.被保険者本人または、世帯の中の一員が生活保護法による生活扶助以外の扶助(住宅扶助)その他の援助で厚生労働省令で定めるものを受けるとき
2.地方税における障害者又は寡婦で前年の所得が125万円以下であるとき
3.免除の申請のあった年度または前年度に、失業により保険料を納付することが困難と認められるとき
4.免除の申請のあった年度または前年度に、震災・風水害・火災等で住宅・家財の被害額(保険金・損害賠償金額等を除く)が、その価格の概ね2分の1以上であるとき
5.配偶者からのDVにより保険料を納付することが困難と認められるとき(配偶者の所得は審査対象外)
6.その他3~5に準じ保険料納付が困難と認められるとき
免除申請後の年金額
免除の申請後は、保険料は全額免除もしくは減額免除されます。
その免除・減額期間の年金額は減額対象として計算されます。
全額納付されたときと比べ、受給額が少なくなります。
免除による年金額の減額された支給分
全額免除 保険料を全額納付したときの年金額の2分の1
4分の3免除 保険料を全額納付したときの年金額の8分の5
半額免除 保険料を全額納付したときの年金額の8分の6
4分の1免除 保険料を全額納付したときの年金額の8分の7
納付猶予は年齢制限がある
納付猶予は年齢制限があります。
これは、今は経済的に苦しいが、将来的に追納できるとの見込みからこの制度が設けられているからです。
平成28年(2016年)7月以降から、20歳から50歳未満で要件に当てはまる人が受けられるようになりました。
納付猶予も免除と同じく、国民年金保険料を払った期間と見なされ、受給資格期間に算入されます。
しかし、免除と違い、納付猶予された期間は老齢基礎年金額の計算には反映されません。
納付猶予の要件
被保険者本人・配偶者の前年の所得が定められた額以下のとき
定められた額
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
免除の「所得以外の基準 いずれかに該当するとき」に当てはまるとき
※配偶者が上記のいずれにも該当しない時は免除されないので注意が必要です。
納付猶予申請後の年金額
納付猶予の申請を行うと、納付猶予を受けている期間は年金額の計算に反映されません。
全く増えない期間ということになります。
追納できるようになったのであれば、早めの納付をおすすめします。
追納については⇒ 「国民年金をわかりやすく説明 第6回(免除期間が終わったら早めに追納しよう)」で確認してください。
免除・納付猶予の申請ができる期間
国民年金保険料を免除または納付猶予してもらうために、申請をするのに可能な期間は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前)までさかのぼることができます。
例:令和1年7月に申請⇒平成29年6月までさかのぼることができる
また、免除・納付猶予は年度毎(1年度は7月から6月)の申請になります。
免除・納付猶予を続けて受ける際は審査があります。
ただし、失業で免除・納付猶予を続けて受ける際は継続申請が必要です。
関連記事こちら⇒国民年金をわかりやすく説明 第4回【年金をもらうための資格期間が足りない!年金額が少ない!任意加入被保険者で解決しよう】